またまた今は昔の話でありますが、7月15日まで上野の森の美術館で開催されていた「ネオテニイー・ジャパン-高橋コレクション展」に行ってきました。
「ネオテニイー(幼児形成)」というこの展覧会に冠された聞き慣れない言葉は、動物学や発達生物学で、幼いまま、性的に成熟する進化の過程を指すそうです。説明されても門外漢には未だよくわからない概念なのですが、日本の33名の若手アーティストによる多彩な作品80展が展示されていました。詳細は弐代目青い日記帳さんをご参照下さい。
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1768
怖い夢を見てしまいそうな作品もありましたが、たまたま行った日は、学芸員さんの説明があり、「私にはよくわからないや」、とスルーしてしまう作品なども興味深く見ることができてラッキーでした。
入ってまずあったのが、鴻池朋子さんの「惑星はしばらく雪に覆われる」、「knifer Life」
少女の頃無意識に感じていた、自意識と他者との間にある違和感。ヒリヒリしたものを感じました。写真は弐代目青い日記帳さんの「今日の一点」をご覧下さい。
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1825
会田誠、芋束、奈良美智、村上隆など私も知っている有名な方の作品も多くありましたが、ぐっときたのが、照屋勇賢さんです。
彼は紙袋(ゴディバとかの小型のもの)の一部を木のシルエットに切り抜き、それを袋の内部に立ち上げて小さな森を出現させています。
紙袋の中を覗くと、そこには宇宙がありました。お見せできないのが残念です。
そして山口晃さん。図録の縮小版でしか見たことがなかった「今様遊園図」を10㎝の距離で、隅から隅まで見られる僥倖に恵まれました。絵の右下のおじさんが、温泉卓球で今やスマッシュを決めようとしている瞬間を発見した時は、こちらの方がガッツポーズでした。
3枚の「伝頼朝像」に見られるこだわりが、芸術家魂だ。それにしても、同じ画題を同じ筆致で違う絵として、なんと軽々と美しく描けることであろうか。
高橋さんは精神科のお医者様で、1000点以上にも及ぶコレクションをお持ちなのは、もの凄いお金持ちだからなのだろう、と思っていたらそれだけではなく、株式や不動産を売却して資金繰りをしてまで、現代アートの作品を集められているのだそうです。
そこまで、収集にこだわってこられたのは、現代アートに対し、精神科医として、成熟した、こなれた作品にはない、その人の身体に手をそっと差し入れるかのような感覚を持たれたからなのでしょうか。
この展覧会は、下記の日程で巡回されているので、興味を持った方は是非足を運んでみて下さい。
7月21日~9月10日新潟県立近代美術館
9月19日~11月29日秋田県立近代美術館
12月13日~2010年2月11日米子市美術館